現場のリアル

訪問介護で「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われた時|一人で背負わないための考え方

訪問介護で前のヘルパーさんはやってくれたと言われた時に、支援範囲や確認、記録共有の大切さを表したアイキャッチ画像

訪問介護の現場で、ヘルパーが言われると返答に迷いやすい言葉があります。

それが、

「前のヘルパーさんはやってくれた」

という言葉です。

掃除の範囲を広げてほしい。
予定にない調理を頼まれる。
買い物で追加の物を頼まれる。
家族の分までついでにお願いしたいと言われる。

その時に、利用者さんから「前の人はやってくれたんだけど」と言われると、ヘルパーはとても揺れます。

自分が悪いように感じる。
冷たいヘルパーだと思われそうで怖い。
前任者より劣っているように感じる。
断ったら関係が悪くなりそうで不安になる。

そして、ついこう思ってしまうことがあります。

「今回だけなら、やってもいいかな」

この「今回だけなら」が、訪問介護の現場ではとても難しいところです。

一度対応すると、次回も同じように求められることがあります。
他のヘルパーが入った時に、「この前はやってくれた」と比較されることもあります。
結果として、ヘルパーごとに対応がバラバラになり、利用者さんも混乱してしまうことがあります。

こんなふうに感じていませんか?

  • 「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われると、自分が悪い気がする
  • 断ると冷たいヘルパーだと思われそうで怖い
  • その場で判断していいのか分からない
  • 「今回だけなら」と受けてしまいそうになる
  • 利用者さんとの関係が悪くなりそうで言いづらい
  • モヤモヤしたまま訪問を終えてしまう

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われても、あなたが一人で背負う必要はありません。

利用者さんを責めるのでも、前任者を責めるのでもなく、支援内容を確認して、事業所として対応をそろえることが大切です。

その場で抱え込むほど、支援は少しずつズレていきます。迷ったら記録して、相談して、事業所として確認することが大切です。

この記事では、訪問介護で「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われた時に、ヘルパーが一人で背負わないための考え方、声かけ例、記録や事業所対応につなげるポイントを整理します。

運営者
運営者

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われると、自分が悪いように感じてしまうことがあります。でも、その場で一人で背負わなくて大丈夫です。

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われやすい場面

この言葉が出やすいのは、支援内容の線引きがあいまいになりやすい場面です。

特に多いのは、掃除、調理、買い物、家族分の家事です。

掃除の範囲を広げてほしい時

生活援助の中でも、掃除の範囲は揉めやすいところです。

いつもの部屋だけでなく、別の部屋も掃除してほしい。
窓やベランダもやってほしい。
物置や押し入れの片付けもお願いしたい。
普段の掃除ではなく、大掃除に近いことを頼まれる。

こうした時に、

「前のヘルパーさんはやってくれた」

と言われることがあります。

利用者さんからすると、過去にやってもらえたことだから、今回も同じように頼めると思っているのかもしれません。

ただ、支援内容や時間、計画に含まれていない場合は、その場でヘルパー個人が判断しない方がいいことがあります。

調理で予定外のことを頼まれる時

調理支援でも、予定外の依頼は起こりやすいです。

家族分も一緒に作ってほしい。
数日分の作り置きをしてほしい。
普段の支援内容とは違う料理を作ってほしい。
時間内に終わらない量を頼まれる。

その時に、

「前の人は作ってくれた」

と言われると、ヘルパーは断りづらくなります。

でも、調理内容によっては、サービス範囲、時間、衛生面、家族分の対応など、確認が必要なことがあります。

買い物で追加の物を頼まれる時

買い物支援でも、「ついでにこれもお願い」と頼まれることがあります。

嗜好品を追加で頼まれる。
予定にない高額商品を頼まれる。
家族分の買い物を頼まれる。
支援時間内に戻れない量や場所を頼まれる。

買い物は金銭管理にも関わります。

そのため、「前のヘルパーさんは買ってきてくれた」と言われても、ヘルパー個人の判断で進めるのは危険な場合があります。

家族の分までやってほしいと言われる時

訪問介護では、利用者さん本人への支援が基本です。

しかし現場では、家族の食事、家族の洗濯、家族の部屋の掃除などを頼まれることがあります。

利用者さんや家族からすると、「ついでに少しだけ」という感覚かもしれません。

でも、家族分の家事は、サービス内容との線引きが必要です。

「前はやってくれた」という言葉が出た時ほど、その場の空気だけで判断しないことが大切です。

利用者さんを悪者にしない視点も大切

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われると、ヘルパー側は責められたように感じることがあります。

でも、利用者さんに悪意があるとは限りません。

本当に前任のヘルパーがやっていたと思っている。
支援内容の線引きを知らない。
生活の中で困っていて頼みたくなる。
ヘルパーごとの違いに戸惑っている。
以前のやり方が、本人にとって当たり前になっている。
家族から「頼んでみたら」と言われている。

こうした背景があることもあります。

特に、長く同じ支援を受けている利用者さんほど、「この支援はこういうもの」と感じている場合があります。

過去の対応が積み重なり、本人の生活の流れの中に自然に組み込まれていることもあります。

そのため、新しいヘルパーが入って急に対応が変わると、利用者さんが戸惑うこともあります。

「どうして今日はやってくれないの?」
「前は普通にやってくれていたのに」
「あなたはできないの?」

そんな言葉になることもあります。

この時、利用者さんを責めるだけでは、支援関係は良くなりません。

一方で、利用者さんの気持ちを考えるあまり、ヘルパーが何でも受け入れてしまうのも違います。

利用者さんを悪者にしないことと、支援内容を確認しないまま受けることは別です。

悪意ではなく、生活の流れでそうなっている。
でも、今後の支援としてどうするかは、事業所として確認する。

この視点が大切です。

前任ヘルパーを責める話にも、しない方がいい

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われると、つい前任者の対応が悪かったように感じるかもしれません。

でも、ここも慎重に考えたいところです。

前任ヘルパーは、善意で対応していたのかもしれません。

その時は必要だと思って対応した。
利用者さんの生活状況を見て、少し手伝った。
その場では大きな問題にならなかった。
ただ、事業所内で共有されていなかった。
記録に残っていなかった。
計画や手順書とのズレが整理されていなかった。

こういうこともあります。

現場では、ヘルパーの善意が、そのまま利用者さんの期待につながることがあります。

そして、その対応が事業所内で共有されないまま続くと、次に入ったヘルパーが困ることになります。

これは、前任者だけの責任ではありません。

現場対応、記録、申し送り、手順書、事業所判断がつながっていなかった結果として、起こることがあります。

☝ 事業所側から見ると

前任ヘルパーを責めるのではなく、「実際に何をしていたのか」「計画や手順書とズレていないか」「今後どう統一するか」を確認することが大切です。

誰かを悪者にするより、支援内容を確認する。

その方が、利用者さんにとっても、今のヘルパーにとっても、前任ヘルパーにとっても、落ち着いた対応につながります。

ヘルパー個人で判断しない方がいい場面

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われた時でも、すべてをその場で判断する必要はありません。

特に、次のような内容は、ヘルパー個人で決めない方がいい場面です。

  • 契約や計画にない内容を頼まれる
  • 家族分の家事を頼まれる
  • 医療的判断に近いことを求められる
  • 金銭や買い物内容に不安がある
  • 時間内に終わらない内容を頼まれる
  • 他のヘルパーと対応がズレそうな内容
  • 強く迫られる、断りづらい雰囲気がある

これらは、ヘルパーの優しさや気合いで解決する話ではありません。

一度その場で受けてしまうと、次回以降も同じ対応を求められることがあります。

さらに、別のヘルパーが入った時に、

「前はやってくれた」
「あの人はやってくれた」
「どうして今日はできないの?」

という比較が起こりやすくなります。

ヘルパーごとに対応が変わると、利用者さんも混乱します。

利用者さんから見ると、同じ事業所のヘルパーなのに、人によって言うことや対応が違うように見えてしまうからです。

ヘルパー個人の判断が積み重なると、事業所としての支援がズレていくことがあります。

だからこそ、迷った時はその場で決めず、事業所に確認することが大切です。

運営者
運営者

迷った時に大切なのは、その場で無理に決めることではありません。記録して、相談して、事業所として支援内容を確認することです。

その場では「確認しますね」と返す

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われた時、すぐに強く断る必要はありません。

もちろん、明らかにサービス外のことを頼まれている場合は、対応できないことを伝える必要があります。

ただ、現場で大切なのは、利用者さんを否定する言い方にしないことです。

「それはできません」だけで終わると、利用者さんは突き放されたように感じることがあります。

一方で、「分かりました」と受けてしまうと、次回以降の支援がズレる可能性があります。

そのため、まずは「確認しますね」と返すのが自然です。

場面 声かけ例 ポイント
前任者の対応を言われた時 確認してから対応しますね。 その場で受けず、確認の流れにする。
事業所の方針が必要な時 事業所で統一しているので、一度確認しますね。 個人判断ではなく、事業所対応であることを伝える。
予定外の依頼が出た時 今日は予定している支援を優先しますね。 今できる支援内容を落ち着いて伝える。
必要性がありそうな時 必要なことであれば、事業所で相談して対応を考えますね。 否定ではなく、相談につなげる。
判断に迷う時 私の判断だけでは決められないので、確認しますね。 ヘルパー個人で背負わない形にする。

※スマホでは横にスクロールして確認できます。

「確認しますね」は、逃げの言葉ではありません。

支援内容を守るため。
ヘルパーごとの対応をそろえるため。
利用者さんに分かりやすく説明するため。
次回以降の支援を混乱させないため。

そのために必要な言葉です。

断ることが目的ではなく、支援内容を確認することが目的です。

やりがちだけど、注意したい対応

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われた時、ヘルパーはその場を丸く収めようとしがちです。

利用者さんとの関係を悪くしたくない。
冷たいと思われたくない。
自分だけできない人だと思われたくない。
今日だけなら問題ないかもしれない。

そう考えることは自然です。

でも、次のような対応は注意が必要です。

  • その場で「分かりました」と受けてしまう
  • 前任ヘルパーの対応を否定してしまう
  • 記録に残さない
  • 事業所に報告しない
  • 他のヘルパーに口頭だけで伝えて終わる
  • 「自分だけやればいい」と抱えてしまう
  • ヘルパーごとに対応がバラバラになる

特に危ないのは、「今回だけなら」と受けてしまうことです。

一度やると、利用者さんにとっては「できること」として残ります。

次回また頼まれる。
別のヘルパーにも同じように求められる。
断ったヘルパーが冷たいように見える。
対応の違いから不満につながる。

こうした流れが起こりやすくなります。

また、前任ヘルパーの対応をその場で否定するのも避けたい対応です。

「それは前の人が間違っています」
「本当はやってはいけないんです」

このような言い方をすると、利用者さんは過去の支援そのものを否定されたように感じるかもしれません。

前任者を責めるより、今後の支援内容を確認する。

その方が、利用者さんとの関係を崩しにくくなります。

記録には「言われたこと」と「今回の対応」を残す

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われた時は、記録に残すことが大切です。

ただし、利用者さんへの不満のように書く必要はありません。

大切なのは、事実と支援への影響を残すことです。

  • 利用者さんから言われた内容
  • 「前のヘルパーはやってくれた」という発言があったこと
  • 具体的に何を求められたか
  • 今回どう対応したか
  • 計画や手順書とのズレがあるか
  • 次回も同じ依頼がありそうか
  • 他ヘルパーへの共有が必要か
  • サ責判断が必要か
  • ケアマネジャーや相談支援専門員への確認が必要か

記録は、誰かを責めるために書くものではありません。

次に入るヘルパーが同じ場面で困らないため。
サ責や事業所が支援内容を確認するため。
必要に応じて、利用者さんへ説明するため。
計画や手順書と現場のズレを整理するため。

そのために残すものです。

記録で意識したいこと

「前のヘルパーはやってくれたと言われた」だけで終わらせず、何を求められたのか、今回はどう対応したのか、次回以降の共有が必要かを残すと、事業所として判断しやすくなります。

記録に残すことで、ヘルパー個人の困りごとが、事業所として確認できる情報になります。

事業所は「誰が入っても同じ支援」を整える

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われた時、ヘルパー本人だけに対応を任せてしまうと、支援は不安定になります。

あるヘルパーはやる。
別のヘルパーはやらない。
また別のヘルパーは確認する。

この状態が続くと、利用者さんは混乱します。

同じ事業所から来ているのに、人によって対応が違う。
前はできたのに、今日はできない。
誰に言えばいいのか分からない。

そう感じてしまうことがあります。

だからこそ、事業所として支援内容をそろえることが大切です。

サ責や事業所が確認したいのは、次のようなことです。

  • 前任ヘルパーが実際にどのような対応をしていたか
  • 計画書・手順書・契約内容とズレがないか
  • 今回の依頼がサービス範囲内かどうか
  • 他のヘルパーにも同じ依頼が出ているか
  • 利用者さんへ説明が必要か
  • 記録や申し送りに反映する必要があるか
  • ケアマネジャーや相談支援専門員への共有が必要か
  • 支援内容の見直しを相談すべきか

事業所がここを確認しないままにすると、ヘルパー個人が毎回その場で判断することになります。

それは、ヘルパーにとって大きな負担です。

また、利用者さんにとっても分かりづらい支援になります。

☝ 事業所側から見ると

大切なのは、誰かを責めることではなく、今後の支援をそろえることです。誰が入っても同じ説明・同じ支援になるように、手順書、記録、申し送りに反映していく必要があります。

「誰が入っても同じ支援」になるよう整えることは、利用者さんの安心にもつながります。

ヘルパーを守るためだけでなく、利用者さんにとって分かりやすい支援にするためにも、事業所としての統一が必要です。

まとめ|「前はやってくれた」を一人で背負わない

訪問介護で「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われると、ヘルパーはとても揺れます。

自分が悪いように感じる。
冷たいと思われそうで怖い。
前任者より劣っている気がする。
関係が悪くなるのではないかと不安になる。

そして、「今回だけなら」と受けてしまいそうになることがあります。

でも、その場で一人で背負う必要はありません。

利用者さんを責める必要もありません。
前任ヘルパーを責める必要もありません。

大切なのは、支援内容を確認し、事業所として対応をそろえることです。

  • 掃除、調理、買い物、家族分の家事は線引きが必要になりやすい
  • 利用者さんは悪気なく、過去の支援を当たり前に感じている場合がある
  • 前任ヘルパーも善意で対応していた可能性がある
  • 契約や計画にない内容は、ヘルパー個人で判断しない
  • 迷った時は「確認しますね」と伝え、記録・相談・共有につなげる
  • 事業所は、誰が入っても同じ支援になるよう整える

その場で抱え込むほど、支援はズレていきます。

一人のヘルパーが無理をして受けると、次のヘルパーが困ることがあります。
ヘルパーごとに対応が変わると、利用者さんも混乱します。

だからこそ、迷ったら記録して相談する。

それが、利用者さんの生活と、ヘルパーの働きやすさを守る一番の方法です。

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われても、一人で背負わなくて大丈夫です。

利用者さんも、ヘルパーも、事業所も、同じ支援内容を確認しながら、安心して続けられる形を整えていきましょう。

この記事を書いた人

訪問介護のリアル 運営者

訪問介護のリアル 運営者のアイコン
  • 現場経験
  • 訪問系支援
  • 事業所運営目線

介護・福祉現場での経験をもとに、訪問介護を中心とした在宅支援のしんどさ、働き方、事業所選び、転職判断について発信しています。きれいごとだけではなく、現場で本当に起きていることを大切にしています。

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