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現場の悩み

「前のヘルパーはやってくれた」と言われたら|返し方・記録例と事業所の対応

「前のヘルパーさんは、やってくれたのに」。そう言われると、自分だけ冷たいのかなと迷いますよね。以前の支援を確かめることと、今日の依頼を引き受けることを分けて、事業所につなぐところまで考えていきます。

「前のヘルパーはやってくれた」と言われたら|返し方・記録例と事業所の対応を題材にしたイラスト
イラストは内容を伝えるためのイメージです。
先に、ここだけ

この記事で確かめたいこと

  • 前任者の行動も本人の意図も、確認前に決めつけない。
  • 迷う追加依頼は、その場で実施の約束をせず事業所へ確認する。
  • 確認後の説明と、次の担当への申し送りまで決める。
読みたいところから開く
  1. 「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われやすい場面
  2. 利用者さんを悪者にしない視点も大切
  3. 前任者が何をしていたかは、確認してから考える
  4. ヘルパー個人で判断しない方がいい場面
  5. その場では「確認しますね」と返す
  6. やりがちだけど、注意したい対応
  7. 記録には「言われたこと」と「今回の対応」を残す
  8. 事業所は、支援の範囲と確認方法を共有する
  9. 「前はやってくれた」を、一人の判断にしない

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われやすい場面

この言葉が出やすいのは、支援内容の線引きがあいまいになりやすい場面です。

特に多いのは、掃除、調理、買い物、家族分の家事です。

掃除の範囲を広げてほしい時

生活援助の中でも、掃除の範囲は揉めやすいところです。

いつもの部屋だけでなく、別の部屋も掃除してほしい。 窓やベランダもやってほしい。 物置や押し入れの片付けもお願いしたい。 普段の掃除ではなく、大掃除に近いことを頼まれる。

こうした時に、

「前のヘルパーさんはやってくれた」

と言われることがあります。

利用者さんからすると、過去にやってもらえたことだから、今回も同じように頼めると思っているのかもしれません。

ただ、支援内容や時間、計画に含まれていない場合は、その場でヘルパー個人が判断しない方がいいことがあります。

調理で予定外のことを頼まれる時

調理支援でも、予定外の依頼は起こりやすいです。

家族分も一緒に作ってほしい。 数日分の作り置きをしてほしい。 普段の支援内容とは違う料理を作ってほしい。 時間内に終わらない量を頼まれる。

その時に、

「前の人は作ってくれた」

と言われると、ヘルパーは断りづらくなります。

でも、調理内容によっては、サービス範囲、時間、衛生面、家族分の対応など、確認が必要なことがあります。

買い物で追加の物を頼まれる時

買い物支援でも、「ついでにこれもお願い」と頼まれることがあります。

買い物リストにない品物を追加で頼まれる。 予定にない高額商品を頼まれる。 家族分の買い物を頼まれる。 支援時間内に戻れない量や場所を頼まれる。

買い物は金銭管理にも関わります。

そのため、「前のヘルパーさんは買ってきてくれた」と言われても、ヘルパー個人の判断で進めるのは危険な場合があります。

家族の分までやってほしいと言われる時

訪問介護では、利用者さん本人への支援が基本です。

しかし現場では、家族の食事、家族の洗濯、家族の部屋の掃除などを頼まれることがあります。

利用者さんや家族からすると、「ついでに少しだけ」という感覚かもしれません。

でも、家族分の家事は、サービス内容との線引きが必要です。

「前はやってくれた」という言葉が出た時ほど、その場の空気だけで判断しないことが大切です。

利用者さんを悪者にしない視点も大切

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われると、ヘルパー側は責められたように感じることがあります。

でも、利用者さんに悪意があるとは限りません。

本当に前任のヘルパーがやっていたと思っている。 支援内容の線引きを知らない。 生活の中で困っていて頼みたくなる。 ヘルパーごとの違いに戸惑っている。 以前のやり方が、本人にとって当たり前になっている。 家族から「頼んでみたら」と言われている。

こうした背景があることもあります。

特に、長く同じ支援を受けている利用者さんほど、「この支援はこういうもの」と感じている場合があります。

過去の対応が積み重なり、本人の生活の流れの中に自然に組み込まれていることもあります。

そのため、新しいヘルパーが入って急に対応が変わると、利用者さんが戸惑うこともあります。

「どうして今日はやってくれないの?」 「前は普通にやってくれていたのに」 「あなたはできないの?」

そんな言葉になることもあります。

この時、利用者さんを責めるだけでは、支援関係は良くなりません。

一方で、利用者さんの気持ちを考えるあまり、ヘルパーが何でも受け入れてしまうのも違います。

利用者さんを悪者にしないことと、支援内容を確認しないまま受けることは別です。

悪意ではなく、生活の流れでそうなっている。 でも、今後の支援としてどうするかは、事業所として確認する。

この視点が大切です。

前任者が何をしていたかは、確認してから考える

「前の人が勝手にやったんだな」と、その場で決めないでほしいんです。以前は計画に入っていた、当時は本人の状態が違った、別の時間帯や自費サービスの話だった、という可能性もあります。本人の記憶と記録の内容が違うこともあるでしょう。

一方で、善意で引き受けた対応が申し送りされず、次のヘルパーに伝わっていない場合も考えられます。どれなのかは、利用者さんの一言だけでは分かりません。

確認したいのは、誰が悪いかより、いつ、どのサービスで、何をしていたのかです。前任者の話、記録、当時と現在の計画を、サービス提供責任者(サ責)が照らし合わせます。

  • 以前と今で、支援内容や本人の状態が変わっていないか
  • 介護保険の訪問と、自費など別のサービスが混ざっていないか
  • 計画にはあるのに、現在の担当へ伝わっていない内容はないか
  • 担当者の判断で対応していたなら、どういう事情だったか

もし現在の計画に含まれている支援を、こちらが把握できていなかったなら、利用者さんへの説明も変わります。「確認したところ、予定していた支援でした。引き継ぎが足りず、すみません」と事業所が説明し、手順を確認する必要があります。

反対に、今のサービスで対応できない内容なら、その理由と、困りごとをどこへ相談するかを伝えます。どちらの場合も、現場のヘルパーに説明の矛盾を背負わせないことが大事です。

ヘルパー個人で判断しない方がいい場面

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われた時でも、すべてをその場で判断する必要はありません。

特に、次のような内容は、ヘルパー個人で決めない方がいい場面です。

  • 契約や計画にない内容を頼まれる
  • 家族分の家事を頼まれる
  • 医療的判断に近いことを求められる
  • 金銭や買い物内容に不安がある
  • 時間内に終わらない内容を頼まれる
  • 他のヘルパーと対応がズレそうな内容
  • 強く迫られる、断りづらい雰囲気がある

これらは、ヘルパーの優しさや気合いで解決する話ではありません。

一度その場で受けてしまうと、次回以降も同じ対応を求められることがあります。

さらに、別のヘルパーが入った時に、

「前はやってくれた」 「あの人はやってくれた」 「どうして今日はできないの?」

という比較が起こりやすくなります。

ヘルパーごとに対応が変わると、利用者さんも混乱します。

利用者さんから見ると、同じ事業所のヘルパーなのに、人によって言うことや対応が違うように見えてしまうからです。

ヘルパー個人の判断が積み重なると、事業所としての支援がズレていくことがあります。

だからこそ、迷った時はその場で決めず、事業所に確認することが大切です。

図解:前任者と対応が違うとき(タップで拡大)

その場では「確認しますね」と返す

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われた時、すぐに引き受ける約束をしなくて大丈夫です。

もちろん、明らかにサービス外のことを頼まれている場合は、対応できないことを伝える必要があります。

ただ、現場で大切なのは、利用者さんを否定する言い方にしないことです。

「それはできません」だけで終わると、利用者さんは突き放されたように感じることがあります。

一方で、「分かりました」と受けてしまうと、次回以降の支援がズレる可能性があります。

そのため、まずは「確認しますね」と返すのが自然です。

場面声かけ例ポイント
前任者の対応を言われた時確認してから対応しますね。その場で受けず、確認の流れにする。
事業所の方針が必要な時私だけでは決められないので、事業所に確認しますね。個人判断ではなく、事業所対応であることを伝える。
予定外の依頼が出た時今日は予定している支援を優先しますね。今できる支援内容を落ち着いて伝える。
必要性がありそうな時必要なことであれば、事業所で相談して対応を考えますね。否定ではなく、相談につなげる。
判断に迷う時私の判断だけでは決められないので、確認しますね。ヘルパー個人で背負わない形にする。

「確認しますね」は、逃げの言葉ではありません。

支援内容を守るため。 ヘルパーごとの対応をそろえるため。 利用者さんに分かりやすく説明するため。 次回以降の支援を混乱させないため。

そのために必要な言葉です。

断ることが目的ではなく、支援内容を確認することが目的です。

「確認します」の後まで、言葉にする

確認先と、回答を伝える人を決めておくと、利用者さんを待たせたままにしにくくなります。「このあとサ責へ連絡して、今後の対応を誰からお伝えするかも確認しますね」と伝える形です。返答の時刻が決まっていないのに、「今日中に必ず」と約束する必要はありません。

事業所につながらない時も、判断が必要な追加支援を独断で引き受けることは避けます。既定の連絡先や代替の連絡方法を使い、予定している支援を安全に進められるか確認します。体調の急変や危険がある時は、通常の追加依頼とは分け、事業所の緊急時の手順に従ってください。

確認待ちの依頼を、実施する約束に変えない。 ここは、本人にも次の担当にも分かる言葉で残しておきたいです。

やりがちだけど、注意したい対応

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われた時、ヘルパーはその場を丸く収めようとしがちです。

利用者さんとの関係を悪くしたくない。 冷たいと思われたくない。 自分だけできない人だと思われたくない。 今日だけなら問題ないかもしれない。

そう考えることは自然です。

でも、次のような対応は注意が必要です。

  • その場で「分かりました」と受けてしまう
  • 前任ヘルパーの対応を否定してしまう
  • 記録に残さない
  • 事業所に報告しない
  • 他のヘルパーに口頭だけで伝えて終わる
  • 「自分だけやればいい」と抱えてしまう
  • ヘルパーごとに対応がバラバラになる

特に危ないのは、「今回だけなら」と受けてしまうことです。

一度やると、利用者さんにとっては「できること」として残ります。

次回また頼まれる。 別のヘルパーにも同じように求められる。 断ったヘルパーが冷たいように見える。 対応の違いから不満につながる。

こうした流れが起こりやすくなります。

また、前任ヘルパーの対応をその場で否定するのも避けたい対応です。

「それは前の人が間違っています」 「本当はやってはいけないんです」

このような言い方をすると、利用者さんは過去の支援そのものを否定されたように感じるかもしれません。

前任者を責めるより、今後の支援内容を確認する。

その方が、利用者さんとの関係を崩しにくくなります。

記録には「言われたこと」と「今回の対応」を残す

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われた時は、記録に残すことが大切です。

ただし、利用者さんへの不満のように書く必要はありません。

大切なのは、事実と支援への影響を残すことです。

  • 利用者さんから言われた内容
  • 「前のヘルパーはやってくれた」という発言があったこと
  • 具体的に何を求められたか
  • 今回どう対応したか
  • 計画や手順書とのズレがあるか
  • 次回も同じ依頼がありそうか
  • 他ヘルパーへの共有が必要か
  • サ責判断が必要か
  • ケアマネジャーや相談支援専門員への確認が必要か

記録は、誰かを責めるために書くものではありません。

次に入るヘルパーが同じ場面で困らないため。 サ責や事業所が支援内容を確認するため。 必要に応じて、利用者さんへ説明するため。 計画や手順書と現場のズレを整理するため。

そのために残すものです。

記録で意識したいこと

「前のヘルパーはやってくれたと言われた」だけで終わらせず、何を求められたのか、今回はどう対応したのか、次回以降の共有が必要かを残すと、事業所として判断しやすくなります。

記録に残すことで、ヘルパー個人の困りごとが、事業所として確認できる情報になります。

事業所は、支援の範囲と確認方法を共有する

「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われた時、ヘルパー本人だけに対応を任せてしまうと、支援は不安定になります。

あるヘルパーはやる。 別のヘルパーはやらない。 また別のヘルパーは確認する。

この状態が続くと、利用者さんは混乱します。

同じ事業所から来ているのに、人によって対応が違う。 前はできたのに、今日はできない。 誰に言えばいいのか分からない。

そう感じてしまうことがあります。

だからこそ、事業所として支援内容をそろえることが大切です。

サ責や事業所が確認したいのは、次のようなことです。

  • 前任ヘルパーが実際にどのような対応をしていたか
  • 計画書・手順書・契約内容とズレがないか
  • 今回の依頼がサービス範囲内かどうか
  • 他のヘルパーにも同じ依頼が出ているか
  • 利用者さんへ説明が必要か
  • 記録や申し送りに反映する必要があるか
  • ケアマネジャーや相談支援専門員への共有が必要か
  • 支援内容の見直しを相談すべきか

事業所がここを確認しないままにすると、ヘルパー個人が毎回その場で判断することになります。

それは、ヘルパーにとって大きな負担です。

また、利用者さんにとっても分かりづらい支援になります。

☝ 事業所側から見ると

大切なのは、誰かを責めることではなく、今後の支援をそろえることです。誰が入っても判断の根拠を共有できるように、手順書、記録、申し送りに反映していく必要があります。

「誰が入っても確認できる支援の基準」になるよう整えることは、利用者さんの安心にもつながります。

ヘルパーを守るためだけでなく、利用者さんにとって分かりやすい支援にするためにも、事業所としての統一が必要です。

本人の状態に合わせることと、担当者ごとの独断は違う

対応をそろえると言っても、毎回まったく同じ動きをするわけではありません。その日の体調や本人の希望、生活の変化を確かめることは必要です。どこまで現場で調整でき、どこからサ責へ相談するかを手順に残します。

事業所が対応方針を決めたら、本人への説明、担当者への共有、計画や手順書への反映までつなげます。次の訪問でまた同じ迷いが出たら、「伝えてあるはず」で終わらせず、説明が伝わったか、実際に運用できる内容かを確認します。

利用者さん・ご家族が確認したい時は

以前と対応が違えば、理由を聞きたくなるのは自然です。「以前はこの支援を受けていた。今はどういう内容になっていますか」と事業所へ確認して構いません。いつ頃、何をしてもらっていたかを伝えると、記録と照合しやすくなります。

また、「床に物が増えて歩きづらい」「買い物に行けず食品が足りない」など、作業名と一緒に今困っていることを伝えてください。今の訪問でできる範囲を確認し、必要ならケアマネジャーなどへ支援の見直しを相談するきっかけになります。

「前はやってくれた」を、一人の判断にしない

以前の支援を確かめることと、今の依頼を引き受けることは別です。前任者も利用者さんも、事実を確かめる前に責める必要はありません。

  • 何を頼まれたかを具体的に聞く
  • 現在の計画と、以前の対応を事業所へ確認する
  • 実施したこと・していないことを記録する
  • 回答する人と、次の担当への申し送りまで決める

介護保険の訪問介護では、本人以外のための家事や大掃除など、対象にならない支援があります。計画に書けば何でもできるわけでもありません。個別の依頼は、サービスの種類と内容を事業所へ確認してください。

サービス範囲の参考:介護サービス情報公表システム「訪問介護」(確認:2026年10月9日)。本記事は介護保険の訪問介護を中心に説明しています。

予定外の依頼への返し方は、「ついでにお願い」はどこまで?でも紹介しています。会話の時間に困る場合は、話が長くて支援が進まない時の対応も読んでみてください。

案内役・はるのイラスト
この記事の書き手

はる 訪問介護のリアル

福祉の仕事に20年以上

良いところも、しんどいところも。

都内で訪問介護事業所を経営しています。現場で支える側と、相談を受ける側。その両方で感じてきたことを、このブログでお話ししています。

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