「お手洗いを借りてもいいですか」が言えず、つい我慢してしまう。利用者さん宅への配慮は必要ですが、職員の身体の都合も置き去りにはできません。声かけだけでなく、勤務全体でできる準備を考えます。

この記事で確かめたいこと
- 利用者宅で借りる時は確認し、借りられない場合の方法も考える。
- 場所だけでなく、時間と支援を引き継ぐ方法を事業所へ相談する。
- 水分を控えることで勤務に合わせず、予定と環境を調整する。
読みたいところから開く
「お手洗いを借りたい」と言いづらいことも、相談していい
利用者さん宅で支援している途中に、トイレへ行きたくなった。でも「少しお借りしてもいいですか」が言えない。ご家族がいる、異性のお宅で気になる、普段は排泄介助で使っている場所なので抵抗がある。ためらう理由はいろいろあります。
「仕事なんだから先に済ませておくべきだった」と、自分を責めてしまうこともあるでしょう。訪問前の準備はできますが、身体の都合を毎回予定どおりに合わせられるとは限りません。
ここで考えたいのは、我慢できる人になる方法ではありません。必要な時にトイレを使えることと、利用者さんの安全・自宅への配慮をどう両立するかです。
この記事は、介護保険の訪問介護だけでなく、長時間になることがある居宅介護・重度訪問介護や、連続訪問の働き方も含めて整理しています。利用者さん宅で借りられるかだけでなく、勤務全体の中で事業所が準備することを考えます。
無断で使わず、我慢が前提の勤務にもせずに
利用者さんのご自宅なので、トイレを借りる時は確認が必要です。他人に使われることへの抵抗や、家族の利用との兼ね合いもあります。前の担当者が借りていたからといって、自分も無断で使ってよいとは考えないようにします。
一方で、借りられないなら勤務中ずっと我慢する、という結論にもしたくありません。利用者さん宅で使うことが難しいなら、別の場所や交代などの方法を事業所が調整する必要があります。
本人へ許可を求める話と、職員が勤務中にトイレへ行ける体制を作る話は、分けて考えます。利用者さん一人に、職員の勤務上の問題をすべて解決してもらうものではありません。
訪問前後に使える場所を知っておくことは役立ちます。ただし「寄れる場所がある」と「勤務の合間に寄れる時間がある」は違います。移動時間しかない予定なら、ルートや訪問間隔も含めて相談しましょう。
最初の訪問より前に確認できると、現場の負担が減る
長時間の支援では、途中で必要になった場合の方法を事業所から事前に確認しておくと、毎回ヘルパーがその場で切り出す負担を減らせます。借りられる場合も、使う場所や声をかける相手など、必要な配慮を共有します。
「誰も相談してこなかったから問題はない」とは限りません。事業所側から、移動と支援を合わせて無理のない予定か確認してほしいところです。
長時間支援と連続訪問では、場所と時間をセットで確認
一件の訪問時間だけを見ていると、困りごとが見えないことがあります。短い訪問が続いていても、移動を挟んで何時間も事業所に戻れないなら、途中で使える場所と時間が必要です。
長時間の支援では、自宅のトイレを借りられるとしても、本人の見守りや介助をどう確保するかが課題になることがあります。支援の途中でその場を離れてよいか、交代が必要かを、個別の支援内容に沿って確認します。
| 困る場面 | 事前に確認したいこと |
|---|---|
| 連続訪問で余裕がない | 移動経路の利用可能な場所と、立ち寄れる時間 |
| 長時間の支援 | 使えるトイレ、必要時の交代・連絡方法 |
| 本人の見守りを離れられない | 誰がどのように支援を引き継ぐか |
| 借りる許可を得にくい | 事業所からの事前確認と、別の方法 |
| 体調に応じた配慮が必要 | 勤務時間・交代・担当調整を相談する窓口 |
水分を減らすことで帳尻を合わせない
「飲まなければトイレへ行かずに済む」と考えてしまうほど、余裕がない勤務になっていませんか。特に暑い時期は、移動中にも訪問先でも水分補給が必要です。厚生労働省も熱中症予防として、暑さを避けることと、こまめな水分補給を案内しています。厚生労働省「熱中症予防のために」
この記事では一律の飲水量を決めません。医師から水分等について指示がある場合は、その指示に従ってください。必要なのは、トイレに行けない予定に身体を合わせることではなく、水分補給や休める時間も取れる働き方を相談することです。
体調が悪い時は、予定の支援を終えるまで黙って耐えないでください。事業所へ連絡して、安全に支援を引き継ぐ方法や必要な対応を相談します。
借りる時の声かけと、使えないと言われた時の対応
利用者さん宅でお借りする時は、「少しお手洗いをお借りしてもよろしいですか」と、短く丁寧に確かめます。使う場所や配慮事項が決まっている場合は、それに沿います。
必要以上に私的な体調の話を詳しく説明することはありません。必要な事情は管理者等へ相談し、本人・家族へどのように伝えるかを調整できます。
| 場面 | 伝え方の例 |
|---|---|
| その場でお願いする | すみません。少しお手洗いをお借りしてもよろしいですか。 |
| 事業所から事前に確かめる | 長時間の支援なので、職員が途中でお手洗いを必要とする場合の方法を相談させてください。 |
| 借りられない時 | 承知しました。別の方法を事業所に確認させてください。 |
使わせてもらったら、汚した所がないかを確認し、お礼を伝えます。収納を勝手に開けたり、私物や清掃用品を無断で使ったりしないようにします。いつもと違う状態に気づいた時は、必要な範囲で本人へ伝えてください。
許可があっても、支援の安全は別に確かめる
「どうぞ」と言われたからといって、本人を安全に見守れない状態で離れてよいとは限りません。本人の状態や支援内容に合わせ、事前に決めた方法で対応します。家族が家にいるだけで、当然に代わってくれると考えないことも大切です。
事前の方法がない、今すぐ必要だが離れられない時は、その状況を事業所へ伝えます。本人を無断で置いて外へ出る、決まっていない交代を家族に押し付ける、という対応にはしないでください。
断られた時に、その場で交渉を続けない
借りられないことが分かったら、それは次回以降の勤務を考えるための情報です。「ヘルパーなら我慢するべきだ」と自分だけで引き受けず、別の場所や交代の方法を事業所へ相談しましょう。
事業所が整えるのは、許可・交代・移動の余裕
「みんな何とかしているから」で済ませると、相談しにくい人ほど我慢する形になります。職員の遠慮を前提にせず、どの勤務でも必要な時に対応できるかを確認したいところです。
1.利用者さん宅で必要になる場合の事前確認
長時間支援などで必要になる場合は、誰が本人・家族へ説明するのかを決めます。借りられるかだけでなく、場所や声かけなど、確認した内容を担当者へ共有します。借りられない場合の別の方法もセットで考えます。
2.見守りや介助を引き継ぐ方法
支援を途切れさせられない場合は、職員が少し離れる時にどうするかを検討します。利用者さんの安全を確かめず、家族がいることだけを理由に代わりを頼む形にはしないようにします。
交代要員をどう確保するか、いつ誰へ連絡するかまで決まっていれば、現場で一から相談する負担が減ります。決めた方法が実際に使えたかも、その後に確認してください。
3.訪問間隔と移動ルートの見直し
地図上は間に合う予定でも、信号、駐輪、階段、入退室の準備が加わると余裕がないことがあります。職員から、実際の移動時間と立ち寄れない区間を聞いて調整します。
利用できる施設が近くにあっても、営業時間外だったり、利用条件があったりすることもあります。お店や施設のトイレを、確認なしにいつでも使える前提にしないようにしましょう。
4.個別の事情を話せる窓口
妊娠中、持病、服薬、その他の体調上の事情など、必要な配慮は人によって違います。性別だけで決めず、本人が相談できる相手を明確にします。利用者さんや他の職員へ、健康情報を必要以上に広めることは避けてください。
必要な配慮を聞いたら、本人の努力だけに戻さず、担当・勤務時間・交代の方法へ反映します。どこまで共有してよいかも本人と確認すると、相談の心理的な負担を減らせます。
管理者に相談する時は、勤務のどこで困るかを伝える
相談する時に、私的な事情を全員へ詳しく説明する必要はありません。まず「この勤務では途中でトイレに行けず、無理が出ています」と伝えてよい内容です。
そのうえで、何時から何時まで連続しているか、移動の余裕がどのくらいあるか、利用者さん宅で借りられるか、見守りを離れられるかを整理すると、調整する箇所を見つけやすくなります。
調整後にも、使える方法だったかを確かめる
「近くの施設へ寄ってよい」と決まっても、予定にその時間が入っていなければ解決していません。実際に立ち寄れたか、本人の支援に無理が出なかったか、同じ悩みが残っていないかを確認します。
相談しても状況が変わらず、体調への負担が続く時は、別の管理者や事業所の相談窓口へ、これまで相談した内容と未解決の点を伝えます。働き方全体を見直したい時は訪問介護を辞めたいと思った時の整理も参考にしてください。
職員のトイレ使用と、勤務上の休憩の扱いは、あいまいに一つにせず、それぞれ事業所に確認します。実際に支援していない時間を、支援をしたように記録して調整するものではありません。
「遠慮できる人」に頼らず、使える方法を決める
利用者さん宅のトイレを借りづらいという悩みは、声かけだけで解決するとは限りません。本人への確認、支援中の安全、交代の方法、移動の余裕。それぞれを確かめて、実際に使える方法にしていきます。
利用者さんのご自宅への配慮と、職員が必要な時にトイレへ行けることを、両方大切にする。そのための相談は、してよいことです。
言い出せず水分を控えている、毎回勤務の途中から我慢している、体調への負担がある。そんな状態を「慣れ」で乗り切ろうとせず、次の勤務の前に事業所へ伝えてみてください。
初めて訪問する前の確認は初回同行のチェックポイント、言葉にしにくい相談は報告・相談の伝え方も参考にしてください。
