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現場の悩み

訪問介護でにおいがつらい|言い出しにくい負担を、我慢だけで処理しない

玄関に入った瞬間、今日はつらいと感じる。でも「においがきつい」と言えば、本人を傷つける気がして黙ってしまう。その遠慮で、ヘルパーの負担が見えなくなることがあります。相手への敬意と、自分のつらさの相談は両立してよいです。

訪問介護でにおいがつらい|言い出しにくい負担を、我慢だけで処理しないを題材にしたイラスト
イラストは内容を伝えるためのイメージです。
先に、ここだけ

この記事で確かめたいこと

  • ガスなどの危険が疑われる時は、立ち入って調べない。
  • 物品だけで解決せず、衛生や支援の組み方を見直す。
  • 本人の評価ではなく、状況と体調への影響を伝える。
読みたいところから開く
  1. 訪問介護は「生活のにおい」の中に入る仕事
  2. 体調への影響がある時は、我慢して支援を続けない
  3. それでも「においがつらい」と言い出しにくい理由
  4. においの負担は、我慢だけで抱えるものではない
  5. 香りで隠すより、原因と支援の条件を見直す
  6. 事業所が「においの負担」に向き合うべき理由
  7. においがつらいから、利用者さんを大切にしていないわけではない
  8. 言い方を整えるより、負担があることを先に伝える
  9. 本人を傷つけたくない気持ちで、自分を消さない
  10. 参考資料・制度の確認先

訪問介護は「生活のにおい」の中に入る仕事

訪問介護は、施設や病院とは違い、 利用者さんが日々暮らしている家そのものに入って支援を行います。

そこには、その人の生活リズム、食事、洗濯、湿度、ペット、たばこ、 住環境の状態が、そのまま空気として残っています。

玄関を開けた瞬間に、 「今日は少しきついかもしれない」 と身体が先に反応することもあります。

とくに夏場は、閉め切った室内の湿気と生活臭が混ざり、 入室した瞬間に一気に重たく感じることがあります。

訪問介護では、“生活のにおい”も現場の一部として受け止めながら働くことになります。

ただし、それは 「どんな環境でも何も感じずに耐えられるべき」 という意味ではありません。

生活の中へ入る仕事だからこそ、 においが負担になる現実も、きちんと言葉にしていいのです。

図解:言いにくい負担ほど、一人にしない(タップで拡大)

体調への影響がある時は、我慢して支援を続けない

気分が悪い、息苦しい、頭が痛いなどの不調がある場合は、その場の安全を確保し、事業所へ連絡します。症状の原因を、この記事だけでにおいのせいと判断することはできません。強い症状や緊急性がある時は、救急要請も含め必要な対応を優先します。

特に、ガス臭など危険が疑われる場合は、普段の生活臭と同じ対策にしないでください。東京ガスネットワークは、ガス臭い場所に立ち入らず、火気や電気のスイッチを扱わないよう案内しています。換気扇を回して調べようとせず、安全な場所から地域のガス事業者の緊急窓口へ連絡します。本人にも危険がある場合は、緊急対応を優先してください。

日常的な負担については、どの場所、どの支援中、どの程度の時間でつらくなるかを伝えます。感じ方が他の担当者と違っていても、相談してよい情報です。

それでも「においがつらい」と言い出しにくい理由

においの負担は確かにあるのに、 それを事業所へ相談するのは簡単ではありません。

利用者さんに失礼だと感じる

「においがきつい」と口にすることで、 利用者さんの暮らしや尊厳を否定しているように感じてしまう。

これは、支援者としての優しさでもあります。 でも、その優しさが自分を追い詰めてしまうこともあります。

自分の我慢不足だと思ってしまう

「他の人は行けているのに」 「自分だけ気にしすぎなのかも」 と考えてしまう人もいます。

けれど、においの感じ方には個人差があります。 においがつらいと感じることは、甘えでも、支援者失格でもありません。

他のヘルパーが平気そうに見える

他の担当者が平気かどうかは、外から見ただけでは分かりません。本人の感じ方を聞く必要があります。

表に出ないからこそ、 「自分だけが弱い」と思い込みやすいのです。

事業所に相談していい内容か分からない

においのことを相談して、 「そんなこと言わないで」 「仕事なんだから」 と返されるのではないかと不安になる人もいます。

でも、においは相談していい問題です。むしろ、無理が積み重なる前に共有した方がいい負担です。

「担当を外してほしい」と言いづらい

担当変更を相談すると、 利用者さんを拒否しているように感じてしまうことがあります。

けれど、においには相性があります。 本当に限界を超える前に調整を相談することは、悪いことではありません。

においの負担は、我慢だけで抱えるものではない

においがあること自体を、完全になくすことは難しい場合もあります。 生活の場に入る仕事である以上、避けきれない場面もあります。

それでも、 「慣れるしかない」 「みんな我慢している」 で終わらせてしまうのは違います。

できる工夫をする。 事業所へ共有する。 必要なら担当や訪問順を調整する。

においの負担は、“本人の根性”ではなく、“負担を減らす工夫”で考えるものです。

香りで隠すより、原因と支援の条件を見直す

マスクへ香料を付ける、何枚も重ねる、消臭剤をまく。こうした方法を、においの強い全家庭へ勧めることはしません。香りで気にならなくなっても、安全が確保されたことにはなりませんし、本人やヘルパーの体調に合わない場合もあります。

まずは、排泄物の処理、衣類、ごみ、換気、喫煙など、確認できる状況を事業所と共有します。清掃や処理の頻度、物品の不足、本人だけでは続けにくい作業があるかを見ます。必要な感染対策は、厚生労働省の手引きと事業所の手順に沿って行います。

換気を相談する場合は、本人の了承、室温、体調、窓の安全を確認します。どんな環境でも窓を開ければ解決する、とは考えません。喫煙による負担は、別途、訪問時の喫煙や事業所の対応方針を相談します。

着替えや必要な保護具などは、業務に必要な物として事業所と相談します。すべてをヘルパーの自費の便利グッズで解決する形にしたくありません。訪問後の手洗いや衣類の扱いも、個人の好みではなく衛生の手順と合わせて確かめます。

事業所が「においの負担」に向き合うべき理由

においの負担は、ヘルパー個人の感じ方として片づけられがちです。

でも実際には、 支援の集中力、訪問継続のしやすさ、メンタル面にまで関わる問題です。

だからこそ、事業所側が 「言っていい」 「相談していい」 という空気をつくる必要があります。

① 初回訪問時に環境情報を共有する

「においが強い家です」 「換気が難しい家です」 「夏場は室内環境がかなり重くなります」

こうした情報は、ヘルパーが訪問前に心構えを持つうえで大切です。

事前に共有できる負担を、何も言わずに現場へ渡す事業所は危ういです。

② 同じ人に負担を集中させない

においの強い訪問を、いつも同じヘルパーが抱える。 それが続けば、心身の負担は偏ります。

担当者の状況を見ながら、 訪問の組み方や担当調整を考えることも事業所の役割です。

③ 「においは相談していい」と伝える

においのことは、本人から言い出しづらい負担です。

だからこそ事業所側から、 「室内環境でしんどいことがあれば相談していい」 と日頃から伝えておくことが大切です。

④ 必要ならサービス調整や他職種連携も考える

清掃支援が必要なのか。 福祉用具や住環境の見直しが必要なのか。 ケアマネジャーへ相談すべき状況なのか。

家の環境が支援に影響しているなら、 事業所だけで抱えず、必要に応じて他職種と連携することも大切です。

においの負担を“ヘルパーの我慢”だけで処理しないこと。それが事業所に求められる姿勢です。

においがつらいから、利用者さんを大切にしていないわけではない

ここは、とても大切なことです。

においがつらい。 できればその訪問は避けたい。 次の予定を見ると気持ちが沈む。

そう感じることと、 利用者さんを大切に思っていないことは、まったく別です。

周囲への気遣いから、 「こんなことを思ってはいけない」 と自分を責めて、限界まで我慢してしまいます。

でも、我慢し続けて心がすり減れば、 丁寧な支援を保つことも難しくなります。

においがつらいと感じることと、利用者さんを大切に支援することは両立します。

つらいと感じた自分を責めるより、 どうすれば無理を抱えすぎずに支援を続けられるかを考える方が大切です。

言い方を整えるより、負担があることを先に伝える

説明用の相談例です。「排泄後の処理の時に気分が悪くなり、支援を続けるのがつらいです。必要な物品と処理の手順、次回の担当を確認したいです」。本人の家を悪く言うのではなく、状況、自分への影響、必要な対応を伝えます。

詳しく説明できないほどつらい時は、「次の訪問に一人で入るのが難しい」だけでも先に連絡してよいです。気持ちが落ち込む、睡眠に影響があるなどの不調が続く場合は、医療機関やこころの耳などの相談先も利用できます。

事業所は、換気や清掃で変えられる部分と、担当・訪問の組み方で変える部分を確認します。担当者を増やすだけで原因を放置したり、平気だと言った人へ全部任せたりしないことも必要です。

相談した後、次の訪問で何が変わるかを聞きます。本人への説明役、必要な物品、訪問体制、改善しなかった時の連絡先。未解決のままなら、そのことを曖昧にしないでください。

本人を傷つけたくない気持ちで、自分を消さない

においがつらいと感じることだけで、支援者としての価値は決まりません。本人の尊厳を守ることと、ヘルパーの体調や負担を守ることの両方が必要です。

衛生や住環境の問題がある時は、本人の暮らしをどう支えるかも考えます。ヘルパーの我慢で続ける形を見直し、本人も担当者も支援を続けられる条件を、事業所と一緒に整えていきたいです。

参考資料・制度の確認先

資料確認日:2026年10月9日。支援の範囲と方法は、本人の状態・希望・計画に沿って関係者と確認してください。本文の相談例は、実在の利用者の事例ではなく説明用です。

案内役・はるのイラスト
この記事の書き手

はる 訪問介護のリアル

福祉の仕事に20年以上

良いところも、しんどいところも。

都内で訪問介護事業所を経営しています。現場で支える側と、相談を受ける側。その両方で感じてきたことを、このブログでお話ししています。

ヘルパーを守りたい。でも、利用者さんの生活も守りたい。簡単に答えが出ないところも、一緒に考えていきます。

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