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現場の悩み

障害福祉の家族対応で板挟みになったら|本人と家族の希望が違う時の相談・記録

本人は自分でしたい。でも、家族からは全部してほしいと言われる。誰かを説得する前に、何を確かめ、どこから事業所に相談するか。具体的な場面で考えます。

障害福祉の家族対応で板挟みになったら|本人と家族の希望が違う時の相談・記録を題材にしたイラスト
イラストは内容を伝えるためのイメージです。
先に、ここだけ

この記事で確かめたいこと

  • 本人の希望と家族の不安を、別々に確かめる。
  • その場で約束せず、確認先と返答の見通しを伝える。
  • 事業所は説明役と対応方針を決め、次の訪問でも確かめる。
読みたいところから開く
  1. 本人の希望と家族の心配を、別々に聞く
  2. 希望が違う場面ごとに、確かめることを変える
  3. 返事を迫られた時は、受け止めてから確認先を伝える
  4. 本人が話しにくい時も、家族の返事だけで決めない
  5. 計画にない依頼は、誰のための何の支援かを確認する
  6. 記録には、本人・家族・自分の対応を分けて残す
  7. 事業所は、相談を受けた後の役割を決める
  8. 家族の不安と、ヘルパーへの威圧は分けて扱う
  9. 相談しても変わらない時は、次の訪問の条件まで相談する
  10. 働く前には、家族対応の説明役と相談先を聞く
  11. ご本人・ご家族へ:希望と困りごとは、どちらも伝えてください
  12. 参考資料

本人の希望を聞くと、家族から別の依頼が出てくる。どちらも気になって、その場で何と答えたらいいか分からない。居宅介護・重度訪問介護で迷いやすい家族対応を、確認する順番と伝え方から見ていきます。

本人の希望と家族の心配を、別々に聞く

「自分でやってみたい」と本人が言う。でも、家族からは「危ないから、全部やってください」と頼まれる。そんな時、どちらに返事をしても、もう片方を傷つけそうで困りますよね。

本人の暮らしを支える仕事だからこそ、まず本人が何を望んでいるかを確かめます。同時に、家族が何を心配しているのかも聞きます。ここを一つにまとめて「ご家族の希望はこうです」と扱うと、本人の声が見えなくなります。

例えば、家族が心配しているのは転倒かもしれませんし、時間がかかることかもしれません。以前うまくいかなかった経験や、支援が終わった後の負担があるのかもしれません。「心配なのは、どの場面ですか」と具体的に聞くと、確認する内容が変わります。

ただし、家族の事情が分かったからといって、その場で本人の希望を取り下げる話にはしません。本人の希望、家族の心配、実際に確かめた状況を分けて、サービス提供責任者(サ責)や管理者と支援方法を考えます。

希望が違う場面ごとに、確かめることを変える

同じ「家族と意見が違う」でも、困っている中身は違います。次は対応を考えるための例です。特定の利用者さんの実例ではありません。

本人は自分でしたい、家族は手伝ってほしい

本人には「どこを自分でやってみたいですか」と聞きます。家族には「どの動作が心配ですか」と聞き、普段の手順や必要な介助を確認します。自分で行う部分と手伝う部分を分けられるかも検討しますが、現場の思いつきで介助を減らしたり、未確認の方法を試したりしないようにします。

「できる・できない」の二択だけではなく、道具、場所、声かけ、待つ時間などで方法が変わることもあります。変更が必要なら、本人と事業所で確認し、必要に応じて関係職種へ相談します。

本人は今日はしたくない、家族は予定どおり進めてほしい

「嫌」の理由を決めつけず、体調、時間、方法、担当者など、何が引っかかっているかを本人が伝えやすい形で確かめます。家族が希望したからといって、本人が望まない支援を無理に進めることは避けます。

予定していたことができない時は、未実施の内容と現在の状況を事業所へ伝えます。順番を変えるのか、方法を変えるのか、今回は行わないのか。時間や安全に関わる判断は、担当ヘルパーだけで抱えないようにします。支援を拒否された時の確認と相談も参考にしてください。

本人は外出したい、家族は心配している

行きたい場所や目的を本人に聞き、家族が気にしている具体的な点を確認します。「外出は危ない」と一括りにせず、移動経路、時間帯、体調、必要な支援などを分けて考えます。ただし、利用するサービスで扱える範囲や計画も確認が必要です。ヘルパーがその場で新しい外出を約束することは避けます。

本人の希望を実現する方法を探すことと、今日この場で実行することは分けて構いません。「希望は伝えます。今日の対応は事業所に確認します」と、次の手順を説明します。

返事を迫られた時は、受け止めてから確認先を伝える

家族から強く言われると、すぐ答えなければいけないように感じます。でも、「分かりました」と支援の変更まで約束すると、後から本人や別の担当者が困る場合があります。

家族の話を聞いたことと、依頼を引き受けることは、言葉を分けて伝えます。

その場での返答例

「ご心配な点は分かりました。ご本人の希望と今の支援内容を確認したいので、責任者に相談します。今日どう対応するかも含めて確認させてください」

さらに、誰が返事をするか、いつ頃までに連絡するかを事業所と決めます。まだ分からない返答時刻を勝手に約束する必要はありません。「返答の目安も確認してお伝えします」で大丈夫です。

「確認します」と言ったまま連絡が来なければ、家族が次のヘルパーに同じ話をするのも無理はありません。持ち帰る対応は、返事までつないで初めて完了します。

本人が話しにくい時も、家族の返事だけで決めない

家族が先に答える、本人がうなずくだけになる、質問しても返事がない。そういう時に、「家族が分かっているから」と本人への確認を省かないようにしたいところです。

本人が普段使っている伝え方を確認します。言葉以外にも、文字、写真、身ぶりなどが使いやすい場合があります。選択肢を短く示す、答える時間を待つなど、本人が理解しやすく伝えやすい方法を考えます。

一度のうなずきだけで同意と決めたり、表情をヘルパーの解釈だけで「嫌がっている」と確定したりしないようにします。どんな説明に、どんな反応があったかを残し、確認できなかった部分もそのまま共有します。

家族の前では話しにくそうな時は、本人が話しやすい確認方法を事業所と相談します。本人の希望を聞くために、家族と対立する場を作る必要はありません。「ご本人にも確認したいので、少しお待ちいただけますか」と伝える方法もあります。

厚生労働省の意思決定支援ガイドラインでは、本人の意思・選好に基づく支援が扱われています。家族の不安を聞くことと、家族の意見を本人の意思として扱うことは分けて考えます。 参考資料は記事末尾に掲載しています。

計画にない依頼は、誰のための何の支援かを確認する

本人の支援に入っている時に、家族から追加の家事や別の用事を頼まれることがあります。「少しだけなら」と引き受ける前に、誰に対する、何のための依頼なのかを確かめます。

確認したいのは、現在の支援内容との関係、本人の意向、必要な時間や物品、ほかの支援への影響です。サービスの種類や支給決定、計画によって扱いが異なるため、家族からの依頼をすべて一律に可・不可とする説明は避けます。

依頼・状況確認する内容
いつもと違う家事を頼まれた誰の生活上の必要か。現在の支援内容で扱えるか。
介助の方法を変えてほしい本人の希望、変更理由、安全と手順。事業所の確認が済んでいるか。
次回から毎回してほしい継続的な変更になるため、計画や時間の見直しが必要か。
本人には言わず進めてほしい本人の意向や情報共有の扱いをどう確認するか。

「前のヘルパーはやってくれた」と言われた場合も、その場で前任者を責めず、これまでの対応を事業所へ確認します。過去の対応差を、今いるヘルパーの厚意で埋め続けないことが大切です。

必要な支援が足りていないと分かった時には、断る説明だけで終わらせません。本人の困りごとを事業所へ伝え、支援体制の相談につなげます。予定どおり支援が進まない時の記事では、残り時間と未実施の伝え方を扱っています。

記録には、本人・家族・自分の対応を分けて残す

「家族の要求が強かった」だけでは、何を確認すればよいか伝わりません。本人の言葉、家族の言葉、実際の状況、自分の返答、事業所への相談内容を分けて残します。

説明用の記録例:支援方法の希望が違った時

片づけの開始前、本人は「この引き出しは自分で片づけたい」と話された。家族からは「時間がかかるので全部してほしい」と依頼があった。本人の希望と本日の支援内容を確認するためサ責へ連絡。本人が行う部分とヘルパーが手伝う部分について確認し、その内容を本人・家族へ説明した。

これは書き方の例です。実際の記録には、確認した具体的な方針、実施した内容、未実施の内容、本人の反応などを事実に沿って補います。連絡がつかなかったのに「確認済み」と書いたり、推測した気持ちを本人の発言に置き換えたりしないでください。

相談先から返答がなければ、その事実と、現在困っている判断を伝え直します。緊急時は通常の記録の返事を待たず、事業所の緊急連絡手順に沿って対応します。

記録の組み立て方は障害福祉の記録の書き方で詳しく紹介しています。

事業所は、相談を受けた後の役割を決める

僕は、現場から相談が来た後に「うまくやって」で返さないことが大事だと思っています。次の訪問でも同じ迷いが起きるなら、ヘルパーの話し方だけを直しても解決しません。

事業所で確認したいのは、次の四つです。

図解:本人と家族の希望が違う時(タップで拡大)

まず本人の希望と家族の不安を確認し、現時点の計画や手順と照合します。そのうえで、今日の対応と、継続的に見直す内容を分けます。継続的な変更が必要なら、本人の意向を踏まえ、相談支援専門員など関係者との調整を検討します。介護保険のサービスも利用している場合は、その支援に関わるケアマネジャーとの確認が必要なこともあります。

次に、本人・家族への説明を誰がするか決めます。現場で同じ依頼を受け続けている時や、説明が食い違っている時には、サ責や管理者が直接説明することも必要です。

決まった内容は、担当する職員に共有します。「家族対応は注意」で終わらせず、受けてよい内容、確認が必要な内容、同じ依頼があった時の返答、連絡先までそろえます。引き継ぎ方は支援手順書の記事も使えます。

最後に、方針を決めて終わりにしないこと。次の訪問で本人が納得していたか、家族の不安は残っているか、時間や職員の負担に無理がないかを確かめます。同じ問題が続くなら、説明が届いていないのか、方針自体が現実に合っていないのかを見直します。

家族の不安と、ヘルパーへの威圧は分けて扱う

家族からの質問や改善の要望を、すぐ「困った家族」と受け取らないようにしたいです。説明不足や職員ごとの対応差があれば、事業所として確かめ、修正する必要があります。

一方で、怒鳴り続ける、人格を否定する、脅すといった言動まで、「心配しているから」と職員に我慢させる話ではありません。本人への支援を続けたい気持ちがあっても、職員の安全を後回しにしないでください。

実際にあった言葉や行動、日時、支援への影響を管理者へ伝え、次の訪問をどうするか相談します。対応窓口を管理者に変える、同行する、担当を調整するなどを検討します。差し迫った危険がある時には、議論を続けず安全を確保し、必要な助けを求めます。

家族の要望の中に改善すべき内容があっても、威圧的な言動を受け入れなければ改善できないわけではありません。支援の改善と、職員を守る対応を並行して考えます。

相談しても変わらない時は、次の訪問の条件まで相談する

報告したのに返答がない。「分かった」と言われても次の訪問が近づく。そんな時には、もう一度、いつまでに何を決めてほしいかを伝えてよいと思います。

事業所への相談例

「次回も同じ依頼があった時に、どう答えるか決まっていません。訪問前までに本人・家族への説明役と対応方針を確認したいです。一人での説明が難しいので、同行も相談したいです」

同じ相談が繰り返される、担当者だけが謝り続けている、支援後も不安が強く残る。こうした状況なら、相談先を管理者へ広げることや、担当・勤務の調整も考えます。自分で全部の改善案を用意してからでないと相談できない、ということはありません。

「誰が、いつ、何をするか」が決まったかを確かめてください。本人や家族に説明する予定がないまま、ヘルパーだけに新しい対応が渡されていないかも確認したいところです。

相談体制を見直す視点は、ヘルパーを一人にしない事業所の確認点にまとめています。

働く前には、家族対応の説明役と相談先を聞く

求人票だけでは、こうした調整を誰が担うのかまでは分かりません。面接や見学で、実際の場面を一つ挙げて聞いてみます。

  • 「本人と家族の希望が違った時、訪問中は誰に連絡しますか」
  • 「支援内容の変更は、本人・家族へ誰が説明しますか」
  • 「家族からの依頼を、ほかの担当者へどう引き継ぎますか」
  • 「相談後も対応が難しい時、再同行をお願いできますか」

「何でも相談できます」という返事に加えて、連絡方法や説明役まで答えがあるかを見ます。初回同行では、家族の性格を評価する話だけではなく、現在の支援方針、共有する情報の範囲、連絡窓口を確認したいです。

働く環境を比べたい人は、障害福祉の求人・面接チェックへ進んでください。この記事は本人・家族にも読んでほしいため、ここで一律に転職を勧めるものではありません。

ご本人・ご家族へ:希望と困りごとは、どちらも伝えてください

本人が望む暮らしを支えたい。そのために家族が知っていることや、日々の困りごとも聞きたいと思います。「これをしてほしい」に加えて、「何が心配か」「どの時間に困っているか」が分かると、支援を考える手がかりになります。

ヘルパーが「確認します」と答えた時は、誰から返事が来るか、いつ頃確認できるかも聞いてください。伝えた希望がどうなったか分からないまま、次の訪問を待つ必要はありません。

本人の希望が聞き取りにくい場合も、家族だけ、ヘルパーだけで決めず、伝えやすい方法を一緒に探します。話し合いで決まらない時には、確認できたことと、まだ決まっていないことを分けて、事業所へつなぎます。

参考資料

確認日:2026年10月9日。会話・記録の例は説明用です。個別の支援範囲や変更の可否は、利用するサービス、計画、本人の意向を確認して事業所で判断します。

案内役・はるのイラスト
この記事の書き手

はる 訪問介護のリアル

福祉の仕事に20年以上

良いところも、しんどいところも。

都内で訪問介護事業所を経営しています。現場で支える側と、相談を受ける側。その両方で感じてきたことを、このブログでお話ししています。

ヘルパーを守りたい。でも、利用者さんの生活も守りたい。簡単に答えが出ないところも、一緒に考えていきます。

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