本人や家族が希望を言えることも、ヘルパーが安心して働けることも大切です。担当を替えるかどうかを急ぐ前に、何が起き、何を変えればよいかを、事業所が間に入って整理しましょう。

この記事で確かめたいこと
- 担当変更の希望だけで、本人のわがままや職員の落ち度と決めない。
- 相性、説明や手順の問題、安全に関わる問題を分けて確認する。
- 変更後も本人と職員の双方を確認し、同じ負担を次へ渡さない。
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「担当を変えてほしい」は、理由を分けて受け止める
「次から、別のヘルパーさんにしてもらえませんか」。利用者さんや家族からそう言われると、担当していた職員は傷つくことがあります。事業所も、何があったのか、次の訪問をどう組むのか、すぐに判断を求められます。
一方、頼む側も、生活を支えてもらっている相手だからこそ、言い出すまでに迷っていたかもしれません。
担当変更を希望すること自体を、わがままと決めつける必要はありません。ただし、その希望が出たからといって、ヘルパーに問題があったと決まるわけでもありません。
相性、説明の行き違い、支援手順への不安、実際の不適切な対応など、理由によって必要な対応は違います。
まずは安全を確かめ、本人・家族と職員の話を別々に聞き、何を変える必要があるかを整理する。 担当を替えるかどうかだけを急ぐより、その順番を大切にしたいと思います。変更が必要な場合も、同じ問題を次の担当へ渡さないために確認は欠かせません。
この記事は介護保険の訪問介護を中心に、事業所の対応と、利用者・家族が相談する時の伝え方を整理します。会話や場面は説明用の想定例です。はるの事業所で起きた実話として記載するものではありません。
自宅に来てもらうからこそ、合う・合わないはある
訪問介護は、本人の暮らしの中へ入る仕事です。家の中の音、会話の量、物の置き方、身支度の順番。支援が同じ内容でも、その進め方をどう感じるかは人によって違います。
「話しかけてもらうと安心する人」と「作業中は静かにしてほしい人」がいるように、一つの関わり方が全員に合うとは限りません。
また、身体に触れる支援や着替えなどでは、本人の羞恥心や安心感への配慮が必要です。希望を聞いた上で、事業所として対応できる体制や方法を検討します。
希望どおりの担当を必ず用意できるとは限らないため、何を大切にしたいのかを確認し、可能な選択肢を説明することが重要です。
相性という言葉は便利ですが、何も確認せずに使うと問題が見えなくなります。「何となく合わない」の中に、聞き取りづらい説明、強い痛みを伴う介助、予定外のことを求められる負担などが隠れている場合もあります。
曖昧な言葉を責めるのではなく、具体的な場面へゆっくり戻して聞きます。
最初の返事で、変更の約束も職員の評価も決めない
相談を受けた時は、まず「お話しくださってありがとうございます。どのような場面でそう感じましたか」と受け止めます。「そんなことをする職員ではありません」と先に否定すると、本人や家族は話しにくくなります。
一方で、「その職員は外します」と即答すると、事実確認の前に結論が決まってしまいます。
本人が話せる状況なら、家族の説明だけで本人の気持ちを代弁し終えないことも大切です。家族は気になっていても、本人はその担当に安心している場合があります。逆の場合もあります。
「ご本人は、どのように感じていらっしゃいますか」と、意向を確認する機会を設けます。
返答の期限は、実際に守れる時期を伝えます。確認に時間がかかる場合は、途中の連絡も必要です。「検討します」のまま次の訪問日を迎えると、利用者さんにも職員にも不安が残ります。
次回の訪問をどうするかと、最終的な担当をどうするかは、分けて決めても構いません。
聞き取りでは、出来事・受け止め・希望を分ける
「感じが悪かった」「やり方が雑だった」という言葉だけでは、何を確認すればよいか分かりません。いつ、どの支援の時、何があったかを聞きます。ただし、細部を思い出せないことを理由に相談を退けるのではありません。
最初から完璧な記録を求めず、分かる範囲で整理します。
- 出来事:どのような言葉や動作があったか。本人が見聞きしたのか、家族が後から聞いたのか。
- 受け止め:痛かった、不安だった、急がされているように感じたなど、どう感じたか。
- 希望:担当を替えたいのか、説明を増やしてほしいのか、まず同席して確認してほしいのか。
この三つを分けると、担当変更だけが解決策なのかも見えやすくなります。例えば、物の置き場所が毎回変わることへの不満なら、本人が使いやすい位置を確認して共有する方法が考えられます。
触れる前の声かけがなく怖かったなら、支援の手順そのものを確認する必要があります。
職員には、本人・家族の言葉をそのままぶつける前に、確認したい内容を整理して伝えます。「苦情が来たけれど何をしたの?」では、弁明するか黙るかになりがちです。
「火曜日の更衣の際、声かけが聞こえなかったという相談がありました。当日の流れを教えてください」と、出来事をたどれる問いにします。
記録には、確認できた事実、本人や家族の申出、職員の説明、まだ一致していない点を分けて残します。話が違う時に、どちらかをすぐに嘘と決めつけないことが大切です。認識の違いが残っていても、次回の説明を増やすなど、今できる対策は検討できます。
「前の人はしてくれた」が理由なら、支援範囲を確認する
担当変更の希望が、職員個人の関わり方ではなく、頼めることの認識の違いから出る場合もあります。「前の人は家族の分も作ってくれた」「時間を過ぎても話を聞いてくれた」。
そこで、依頼を断った職員だけを外すと、事業所が何を基準に支援しているのか分からなくなります。
事業所は、その依頼が計画や契約にどう位置づくか、本人の状況に照らして何を確認する必要があるかを整理します。以前の対応があったという話も、事実関係を確かめます。
「前の人が間違っていた」と利用者さんの前で決めつけず、今後はどのように対応するかを事業所の説明として伝えます。
詳しい返し方や記録の考え方は、「前のヘルパーはやってくれた」と言われた時の対応で扱っています。担当を替える前に、事業所として伝えるべきことを、職員一人に言わせていなかったかも振り返りたいところです。
危険やハラスメントがある時は、相性の話で終わらせない
暴力、脅し、性的な言動など、安全や尊厳に関わる問題が疑われる場合は、「少し我慢して、次も行ってみよう」と調整を先延ばしにしないでください。差し迫った危険があれば、その場から安全に離れ、事業所や必要な緊急窓口へ連絡することを優先します。
職員がうまく断れなかったことを責める場面ではありません。
同時に、利用者さんから介助による痛みや不適切な言動の訴えがあった場合も、単なる好みとして流せません。必要な支援と安全を確保し、管理者等が事実確認と対応を進めます。
職員を守ることは、職員側の説明だけを採用することではなく、公平な確認と、危険を放置しないことです。
厚生労働省は介護現場におけるハラスメント対策として、事業所向けマニュアルや研修資料を公開しています。本人の状態や背景への理解も必要ですが、それを理由に、現場の職員だけが負担を引き受ける形にしないことが大切です。
担当変更とサービス提供の終了は別の問題です。何か言われたら直ちに契約終了できるというものではありません。継続が難しい場合も、管理者、ケアマネジャー、必要な関係機関と相談し、契約や運営基準を踏まえて対応を検討します。
厚生労働省も、ハラスメントが一律に提供拒否の正当な理由になるわけではない点を示しています。
「別の人なら耐えられるだろう」という変更では、負担が移るだけです。変更するなら、どの言動にどう対応するか、連絡や同行の体制をどうするかまで検討します。怖さを申し出た職員が、交代した人への申し訳なさまで一人で抱えないようにしたいと思います。
担当変更以外にも、見直せることがある
安全面の緊急性がない場合には、説明や手順を見直すことで不安が減ることがあります。触れる前に声をかける、調理後に献立を短く伝える、物を戻す位置をそろえる。抽象的に「もっと丁寧に」ではなく、次の訪問で何を変えるかが分かる形にします。
本人・家族が希望し、必要性や体制が整うなら、責任者等が同行して状況を確かめる方法も考えられます。ただし、同行すれば全て解決するとは限りません。
責任者がいる時だけ我慢してしまう人もいるため、その後の本人と職員の受け止めを改めて確認することが必要です。
一時的な担当調整を行い、その間に話し合う方法もあります。その場合、「いつまで」「何を確認して」「誰が再度説明するか」を決めます。期限のない一時対応は、いつの間にか元の担当へ戻す圧力になったり、誰も見直さないまま固定されたりしやすいからです。
どの方法を選ぶにしても、利用者さんに「職員へ直接言ってください」と返すだけでは、相談の負担が残ります。本人の声を職員へ届けること、職員の説明を本人へ届けること、その上で事業所として決めること。この間に入る役割を省かないことが大切です。
変更する場合は、誰かの失敗として引き継がない
担当を替える判断になっても、「前の人が嫌われたから」と次の職員へ伝えるのは避けたいところです。それでは先入観だけが残り、支援に必要なことが分かりません。
「説明を聞いてから介助を受けたい希望がある」「物の配置はこの位置で統一する」と、具体的な支援へ変換して引き継ぎます。
本人・家族にも、交代する人の氏名や日時だけでなく、何を共有したかを必要な範囲で説明します。担当が替わっても、支援範囲や事業所の窓口は同じです。「新しい人には何でも頼める」と受け止められないよう、依頼の調整方法も伝えます。
前の担当者の家庭事情や、社内での評価、処分の有無などを、説明のために安易に伝える必要はありません。本人・家族が安心して支援を受けるために必要な情報と、職員の個人情報は分けます。
担当変更を納得してもらうために、誰かを悪者にする説明はしないでほしいと思います。
変更を求められたヘルパーを、一人にしない
担当変更と聞いて、何も感じない人ばかりではありません。「自分はこの仕事に向いていないのか」「別の利用者さんにも嫌がられているのでは」と、不安が広がることもあります。
事業所は、勤務表から名前を消して終わりにせず、本人へ確認した内容と判断を伝える時間を取りたいところです。
「感じが悪い」ではなく、「説明の途中で作業を始めたため、本人は同意を確認されていないと感じた」のように、次に変えられる形で話します。必要な指導と、職員の気持ちを受け止めることは両立できます。
本人に落ち度が確認できない場合も、「気にしなくていい」で終わらせると、なぜ外れたのか分からないままになります。「支援の問題を認めたという判断ではない」「今回は安心して利用を続けるため、組み合わせを変える」と、事実に沿って説明します。
確認できていないことまで、慰めのために断定しないことも大切です。
担当変更で勤務や収入に影響する場合は、その扱いを別に話し合います。「利用者さんの希望だから仕方ない」で全てを済ませず、代替の仕事や勤務調整について、契約と実態を踏まえて確認します。
心理的なフォローだけでなく、その後どう働けるのかが分かることも安心につながります。
家族から相談するなら、希望する解決まで伝えてよい
家族の立場では、「苦情を言ったら、本人への対応が悪くならないか」と心配になることがあるかもしれません。相談は、担当者の個人連絡先ではなく、事業所の責任者や相談窓口へ伝えると整理しやすくなります。
伝える時は、本人の言葉と家族の心配を分けることを意識してください。
すでに本人が強い不安を感じ、次の訪問を受けるのが難しい場合は、その点をはっきり伝えて構いません。「次回までに一度連絡がほしい」「同じ体制のまま訪問を受けるのは不安です」と、直近の希望を知らせます。
安全に関わることは、通常の担当調整とは分けて急いで相談してください。
希望した人へ必ず交代できるとは限りません。だからこそ、変えてほしい理由と、守ってほしいことを共有する意味があります。相手を評価する言葉を探すより、安心して支援を受けるために何が必要かを伝える。その方が、事業所も選択肢を考えやすくなります。
「断られたら終わり」にせず、確認の行き先を持つ
一度相談しても返答が曖昧な場合は、「いつまでに、誰から返事をもらえますか」と確認します。責任者へ話が伝わっているか、次の訪問の予定がどうなっているかも確かめてください。
担当者へ何度も同じ話をするより、窓口と期限をそろえる方が、行き違いを減らせます。
事業所と話しても解決しない時は、ケアマネジャーへ経過を伝えて相談する方法があります。必要に応じて、契約時に案内されている苦情相談窓口や自治体などへの相談も検討します。
いきなり強い言葉で責任を問うためではなく、本人が必要な支援を安心して受ける方法を一緒に考えるためです。
職員側も、利用者さんへ直接説明して納得させる責任を一人で負う必要はありません。管理者やサ責へ状況を伝え、今後の担当、説明する人、次回までの対応を確認します。
連絡を取りづらい職場なら、面談など記録が残る形で相談し、どこまで共有されたかを確かめる方法もあります。
交代した後の確認で、同じ相談を繰り返さない
担当変更ができると、いったん問題が終わったように感じます。でも、本人が気にしていた説明が引き継がれていなければ、別の職員でも同じ不安が起きます。
変更後は「新しい人はどうですか」という好き嫌いの確認だけでなく、最初に困っていた場面がどう変わったかを聞くことが大切です。
例えば、調理内容が分からないことが相談のきっかけなら、何を作ったかを確認できるようになったかを聞きます。更衣の時に急がされる不安があったなら、声かけや進め方を本人がどう感じたかを確認します。
要望が具体的になっていれば、改善したかどうかも話しやすくなります。
次の担当者にも、引き継ぎで足りない情報がなかったか、無理な約束を求められていないかを聞きます。新しい担当だからこそ、良い関係を作ろうとして引き受けすぎる場合があります。
本人から苦情が来なくなったことだけをもって、職員も困っていないとは判断しないでください。
担当変更の希望が続く時も、利用者さんを「誰に替えても駄目な人」とまとめないようにしたいところです。支援の内容が希望と合っていないのか、説明が職員によって違うのか、安心して話せる窓口がないのか。
個人同士の相性から離れて、サービスの組み方そのものを見直す必要があるかもしれません。
見直した内容は、次の職員が読める手順や申し送りへ戻します。責任者の頭の中にだけ解決策がある状態では、休みや交代のたびに同じ確認が必要になります。
相談を一件処理するだけでなく、次の訪問が少し安心になる形で残すことが、事業所の対応として大切です。
守りたいのは、希望を言えることと、安心して働けること
利用者さんが「困っています」と言えること。ヘルパーが「その対応には不安があります」と言えること。どちらも、支援を続けるために必要です。一方の声を守るために、もう一方を黙らせる形にはしたくありません。
安全を確かめ、出来事を整理し、支援の方法を見直し、必要なら担当を調整する。その過程を事業所が引き受けることが大切です。勤務表の名前が変わった後も、本人と職員の両方が安心できているかまで見届けたいと思います。
参考資料
資料確認:2026年10月12日。会話、聞き取りの順序、引き継ぎ項目は編集上の提案です。個別の担当変更、契約終了、苦情対応は、状況と関係する基準・契約を確認して判断します。
