頼られるのはうれしい。でも、休むことまで申し訳なくなる。利用者さんの安心を大切にしながら、特定のヘルパーだけが支え続けない関係と体制を考えます。

この記事で確かめたいこと
- 慣れた職員を希望する理由を、具体的な支援の言葉にする。
- 休みや交代、連絡先の調整は事業所が担う。
- 引継ぎ後も、本人の安心と職員の負担を確かめる。
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頼られるうれしさと、断れない重さは一緒にある
「あなたが来てくれると安心する」。そう言ってもらえるのは、ヘルパーにとってうれしいことです。説明を重ね、生活の手順を覚え、少しずつ築いてきた関係には意味があります。
けれど、その言葉が「あなた以外は嫌」「休まずに来てほしい」に変わると、受け止める側の気持ちは少し違ってきます。
休みを取りたいのに言い出しにくい。自分が行かなければ支援を受けてもらえないと思う。ほかの職員が訪問していても、確認の電話が自分に届く。信頼されていることと、いつでも応じられることは同じではありません。
大切にしたい関係だからこそ、一人に集中した負担を事業所で見直したいところです。
この記事は、利用者さんの安心を尊重しながら、特定のヘルパーだけに支援が集中しない体制を考えるものです。会話・場面・引継ぎ例は想定例で、はるの実体験として記載するものではありません。
「あなたしか嫌」という言葉だけで、本人の性格や心理状態を決めつけることもしません。
慣れた人を希望する理由は、本人にとって切実なこともある
自宅で身体に触れる介助を受ける、生活の細部を見せる、毎回好みを説明する。支援を受ける側にも負担があります。慣れた職員なら短い説明で伝わることや、言いにくいことを話せる安心があるかもしれません。
その希望を、わがままという一言で片づけないことが大切です。
一方、その安心を特定の職員だけが背負うと、欠勤や退職の時に支援そのものが不安定になります。希望を聞くことと、必ずその人だけが担当すると約束することは分けます。どこに安心を感じているかを確かめ、ほかの職員にも引き継げる内容を探します。
褒め言葉だけでは見えない負担がある
責任者が「人気者だから助かる」と喜ぶだけでは、職員はつらさを言い出しにくくなります。本人から頼られることをうれしく思いながら、同時に休めないことに困っている場合もあります。どちらか一方が本音で、もう一方が嘘というわけではありません。
「担当を続けたいか」だけでなく、「今の回数や連絡の量は続けられるか」を聞きます。訪問自体は続けたいけれど、休日の問い合わせは引き受けられない。週の回数を減らせば落ち着いて関われる。
負担を細かく分けることで、全て続けるか全て外れるか以外の選択肢を考えられます。
「その人がよい」の理由を、引き継げる言葉にする
担当を増やそうとする前に、本人が何を不安に感じているかを確かめます。「どうしてほかの人ではだめですか」と聞くと、理由を責められているように聞こえるかもしれません。
「今の担当の、どんなところが安心ですか」と尋ねる方が、具体的な希望を話しやすい場合があります。
人柄だけにまとめず、支援の場面を聞く
優しい、よく分かってくれる、気が合う。そうした言葉をもう少し具体的にします。介助の前に説明してくれる、急がず返事を待つ、調理の好みを覚えている、物を動かしたら戻してくれる。安心の理由が行動になれば、別の担当者も準備できます。
すぐに理由が言葉にならなくても構いません。一度の面談で結論を出そうとせず、実際の支援の中で確認します。ただし、本人の話を聞かず職員同士だけで「こういう人が好きなのだろう」と決めることは避けます。
好みを推測するより、本人が困る場面を確かめる方が引継ぎに役立ちます。
| 本人の言葉 | さらに確かめたいこと |
|---|---|
| 説明しなくても分かる | 毎回説明したくない手順や好みは何か。記録に共有できるか。 |
| 急かされない | 返答や動作を待ってほしい場面はどこか。 |
| 恥ずかしくない | 声かけ、露出への配慮、介助者への希望は何か。 |
| 前の人は怖かった | 何があったのか。相性だけでなく対応上の問題がなかったか。 |
他の職員への不安に、具体的な問題がないか確認する
「その人しか嫌」の背景に、別の担当者による説明不足や乱暴な対応などが隠れていることも考えられます。その可能性を確かめず、交代に慣れてもらうことだけを進めないでください。本人の訴えを聞き、必要な事実確認や支援方法の改善を先に行います。
反対に、ある職員の方法が計画や事業所の手順と違うため、その人だけがよいと評価されている場合もあり得ます。本人の希望を大切にしつつ、必要な支援として行える内容かを責任者が確認します。
特別な対応をしてきた職員一人を責めるのでなく、なぜ違いが生まれたかも見直します。
家族の希望と、本人の希望が違う場合も聞く
家族が「あのヘルパーさんでお願いします」と言っていても、本人が同じ理由で希望しているとは限りません。家族は報告の分かりやすさを評価し、本人は介助の順序を大切にしている場合も考えられます。
話をまとめる前に、それぞれ何に安心しているかを聞き、引継ぐ内容を分けます。
家族への報告が特定の職員だけ詳しいなら、報告する項目や連絡の方法を事業所でそろえる余地があります。本人の前では話しにくい希望がある場合も、無理にその場で答えを求めず、意思を確認する方法を関係者で考えます。
連絡が取りやすい家族の希望だけで、本人の担当を決めないようにしたいところです。
記録を固定した約束にしない
慣れた担当のやり方をすべて固定すると、本人の体調やその日の希望が変わった時に対応しづらくなります。「必ずこの順番」ではなく、本人に確認する箇所、変更できる範囲、迷った時の連絡先を記載します。
引継ぎは本人への確認を不要にするものではありません。
ヘルパー個人が、休みと代わりの人を交渉しない
信頼されている職員ほど、「自分から言った方が納得してくれる」と考えるかもしれません。しかし、勤務や担当体制を職員と利用者の個人的な交渉にすると、休むことが関係を裏切るように感じられてしまいます。
休暇や交代の説明は、事業所が責任を持って行いたいところです。
気持ちは受け止め、約束は事業所へ戻す
「あなたが来て」と言われた時、すぐに否定する必要はありません。「安心していただけてうれしいです」と受け止めながら、担当の予定は事業所で調整すると伝えます。
次回以降の勤務をその場で約束したり、休みの日も連絡を受けると伝えたりしないことが大切です。
この言葉を言った後、実際に責任者から連絡が入ることが重要です。職員が何度も「事業所に聞いてください」と繰り返すだけでは、本人の不安も職員の負担も残ります。相談を受け取った事業所が、いつ誰から連絡するかを決め、本人へ見通しを伝えます。
個人の連絡先を、安心の条件にしない
慣れた職員に聞けば早いという理由で、個人の電話やLINEに連絡が集まることもあります。その場では解決しても、記録が共有されず、休日も職員が確認役になる形では続きません。
本人や家族が何を急いで知りたいのかを確認し、事業所につながる方法を整えます。
連絡先を切り替える時は、番号だけ渡して終えず、受付時間、時間外の取扱い、急ぎの相談の方法を説明します。「今まで聞けたのに」という不安も出るため、個人への連絡を責めるより、今後誰が返事をするかをはっきりさせます。
個人LINE・電話への連絡の線引きも合わせて確認してください。
休む理由を、本人に詳しく説明し続けなくてよい
休暇の理由まで本人に納得してもらおうとすると、私生活の情報を出し続けることになります。「その日はお休みです。事業所から代わりの体制をご案内します」と、必要な説明にとどめる方法があります。
説明する範囲は職員ごとの交渉にせず、事業所でそろえます。
「自分が休むせいで困らせる」という気持ちを職員が抱えている時、責任者は予定の調整を職員の罪悪感に頼らないことが大切です。休めるかどうかを、利用者さんとの関係の良さに左右させない。
支援を続けるためにも、欠勤や休暇が起こる前提で体制を考えます。
別の担当者への交代は、見通しを共有して進める
突然知らない人が来れば、不安が強くなることもあります。可能であれば、誰が、いつ、何の支援を担当するかを前もって説明します。本人の意思や状態、事業所の体制を踏まえ、顔合わせや同行などを検討します。
すべてのケースに同じ回数の同行が必要という意味ではありません。
紹介だけでなく、安心のポイントを一緒に確認する
顔と名前を伝えるだけでなく、本人が大事にしている手順をその場で確認します。「着替えの前に説明することを引き継いでいます」と具体的に伝えると、何が共有されているかが分かります。本人にも、違うと感じた時はどこへ相談できるかを説明しておきます。
慣れた担当者に同席してもらう場合も、その人に全ての説明を任せないようにします。次の担当者が本人へ確認し、責任者が必要な補足をする。いつまでも元の担当者を通じてしか話せない形を作らないことが、引継ぎの目的です。
同行の時間と確認の仕事を、勤務として組む
元の担当者が訪問の合間や休日に手順を教える形では、交代のためにさらに負担が増えてしまいます。事業所は、引継ぎに必要な時間、記録を整える時間、訪問後の確認を業務として予定に入れます。
本人への説明と同じくらい、教える側が無理なく参加できる条件も重要です。
また、新しい担当者にも「何かあれば前の人に聞いて」とだけ伝えないでください。確認を受ける窓口を責任者に置き、判断が必要なことは事業所で扱います。元の担当者に質問が必要な場合も、勤務中にまとめて確認し、次からは記録で分かるようにします。
新しい担当者を、前の人の代用品として紹介しない
「前の人とまったく同じにできます」と約束すると、声や動作の小さな違いまで失敗に見えてしまいます。大切な手順はそろえながら、その担当者が本人へ確認し、関係を作る余地も残します。
紹介する側は、経験や担当する支援について事実を説明し、本人が安心できる情報を伝えます。
新しい担当者が分からないことを確認した時、それを準備不足とだけ捉えないことも大切です。曖昧なまま進めず本人や事業所に確認できたなら、安全のために必要な行動です。ただし、同じ説明を本人に何度も求めているなら記録を見直します。
確認することと、引継ぎが足りないことを区別して改善します。
振り返りでは、小さな違いを具体的に扱う
初回に緊張や戸惑いがあっても、それだけで交代は無理と判断する必要はありません。どの手順で困ったか、本人が何を不安に感じたか、新しい担当者には何が不足していたかを振り返ります。直せる情報不足と、継続が難しい条件を分けて検討します。
一方で、慣れるまで我慢してもらえばよいとも限りません。本人が強い不安を訴える場合や、支援が安全に進まない場合には体制を見直します。交代を成立させること自体を目的にせず、本人が必要な支援を受けられ、職員も無理なく担える方法を探します。
「ほかの人なら断る」と言われた時こそ、事業所で考える
別の担当なら来なくてよい、と言われることもあるかもしれません。その返答を、慣れた職員に伝えて出勤を頼むだけでは、同じ問題が繰り返されます。本人の意思を確認しつつ、その日に支援を受けない場合に何が困るかを具体的に整理します。
拒否の理由と、必要な支援を分けて確かめる
知らない人が怖いのか、以前の対応に不満があるのか、予定の説明が足りなかったのか。同じ「嫌」でも、必要な調整は違います。本人の話を聞くと同時に、食事、排泄、移動など、当日の生活で支援が必要な場面を関係者と確認します。
本人の意思を無視して支援を押し進めるのでも、断られたから何も確認せず終えるのでもなく、ケアマネジャー等と連携して選択肢を検討します。
差し迫った危険がある時は、その状況に応じた緊急の対応を優先します。
特定の職員へ、断られた責任を戻さない
「あなたが行けば解決する」と言われれば、責任感の強い人ほど断りにくくなります。けれど、一度その方法で埋めると、次も同じ人が予定を変える前提になることがあります。
緊急の調整が必要だったとしても、それを通常の体制として固定しない振り返りが必要です。
職員の休暇を利用者へ撤回してもらうよう交渉させたり、職員自身に代わりを探させたりするのでなく、事業所が調整を担います。継続が難しい場合も、その判断を現場の一人に任せず、関係者と今後の支援を相談します。
支援を受ける人にも、働く人にも見通しが必要です。
約束できることと、できないことを曖昧にしない
「なるべく同じ人で」と伝える場合、本人が毎回その人と理解していないか確認します。主担当を置けるのか、複数名で担当するのか、予定変更時にどう連絡するのか。事業所の実際の体制に合う説明をします。
安心させようとして、実現できない約束を増やさないことが大切です。
説明の後は、本人がどう受け取ったかを聞きます。「では休みの日は誰も来ないのですね」という理解なら、代わりの支援について伝わっていません。一方的に説明した記録だけで終えず、本人の理解と残った不安を確認して、次の説明につなげます。
信頼を、一人だけの頑張りで終わらせない
本人が安心している理由を見つけ、ほかの担当者も使える情報にする。困った時は事業所へつながり、職員が休みの日にも支援の見通しがある。その状態を目指すことは、これまでの信頼を壊すことではありません。
大切な関係を、無理なく続けられる形にしていく作業です。
日本介護福祉士会の倫理綱領は、利用者の意思の尊重とともに、関係者との連携を位置づけています。ここで提案している引継ぎや担当調整は、その考え方も踏まえた編集上の例です。具体的な体制は、本人の状態と事業所の実情に合わせて検討します。
職員には、頼られた実績だけでなく負担も聞く
管理者との面談では、訪問件数だけでなく、勤務外の問い合わせ、交代のための説明、予定変更への対応なども確認します。記録に出にくい仕事が特定の人に集まっていないかを見るためです。
「あなたのおかげ」で済ませず、事業所が引き受け直す仕事を具体的に決めます。
担当を分けた後は、元の職員の連絡が本当に減ったか、休みを予定どおり取れているかを確かめます。新しい担当者が不安を抱えていないかも聞きます。表面上の担当表が変わっても、実際の相談が元の人に集中しているなら、引継ぎはまだ途中です。
本人の安心も、継続して確かめる
本人の前で、職員同士が「この人で大丈夫でしたか」と評価を求め合う形は避けたいものです。担当者の優劣ではなく、支援のどこが分かりやすく、どこで困ったかを責任者が聞きます。
新しい担当者にも同じように振り返りの機会を設けることで、比較されるだけの立場に置かず、改善に参加してもらえます。
「交代できました」で終えず、本人が困ることを伝えられているかを確認します。不満を言わなくなったことだけを成功と捉えると、諦めて話さなくなった場合を見落とします。「前に教えていただいた手順で、困るところはありませんか」と具体的に尋ねます。
本人の希望が変わったら、記録も更新します。慣れた担当者の記憶にだけ残さず、次の人が読んで確かめられる形にすることが大切です。支援の細部を共有するほど、本人が毎回説明し直す負担も減らせます。
その積み重ねが、複数の職員への安心につながる可能性があります。
「あなただから安心」を、安心の理由へ広げる
特定の職員を好ましく思うこと自体をなくす必要はありません。その気持ちを大切にしながら、説明があるから安心、希望が引き継がれるから安心、困ったら事業所が応じるから安心、と支えを増やしていきます。
「あなたしか嫌」と言われてうれしかった人も、重く感じた人も、その両方だった人もいると思います。どの気持ちであっても、一人で抱えなくてよい。休むことを申し訳なく思い続けなくてよい。
本人の生活を長く支えるためにこそ、働く人が休める関係と体制を整えていきたいものです。
参考資料
資料確認日:2026年10月13日。担当調整・会話・引継ぎ例は編集上の提案です。本人の希望や状態、支援計画、事業所の体制に応じて関係者で検討してください。
